英語を勉強していて、「これはいい!」と心から思える教材に巡り合えることって、そんなに多くないですよね。
けれど、江藤裕之著『英文法のエッセンス』は、久しぶりにそう感じさせてくれた英文法書でした。
読み終わったときの感覚をひとことで表すなら、

英文法には、
- 現在形と現在進行形
- willやcanなどの助動詞
- aとthe
- at、in、onなどの前置詞
- 不定詞・動名詞・分詞
など、覚える項目がたくさんあります。
学校ではひとつずつ習いますが、「なぜそうなるのか」「それぞれがどうつながっているのか」までは、よく分からないまま暗記していることも多いですよね。
『英文法のエッセンス』は、そうしたバラバラの文法知識をできるだけ少ない原理や考え方で整理し直してくれる本です。
特に私の場合、これまで何となく分かったつもりになっていた助動詞・冠詞・前置詞の見え方が変わりました。
この記事では、実際に最後まで読んで感じたメリットだけでなく、難易度や注意点、どんな人に向いているのかまで詳しくレビューします。

英文法のエッセンス
先にレビューの結論
『英文法のエッセンス』は、英文法をゼロから覚える本というより、一度学んだ文法を「なぜそうなるのか」まで整理し直す本です。
中学・高校レベルの英文法をひととおり学んだ社会人や大学生が読み直すと、特に価値を感じやすいと思います。
逆に、英文法を初めて勉強する人や、TOEIC・大学受験の問題を大量に解きたい人には、この本だけでは不足します。
『英文法のエッセンス』はどんな本?
『英文法のエッセンス』は、江藤裕之氏による英文法書です。
一般的な受験参考書のように「この場合はこの形」「この熟語にはこの前置詞」とルールを大量に並べて覚えさせるタイプとは少し違います。
英文法全体を俯瞰しながら、それぞれのルールの背後にある考え方を理解することに重点が置かれています。
『英文法のエッセンス』基本情報
- 書名:英文法のエッセンス
- 著者:江藤裕之
- 出版社:大修館書店
- 刊行:2015年10月
- ページ数:226ページ
- ISBN:9784469245981
江藤裕之氏は東北大学大学院国際文化研究科の教授で、英語の意味・文法の歴史的研究や英語教育などを研究テーマとされています。
著者の現在の研究分野は、東北大学の研究者紹介でも確認できます。
また、大修館書店による本書の紹介でも、一度英語を学んだ人の頭の中にある文法事項を整理し、英文法全体を見通せるようにする本として紹介されています。
実際に読んでみても、この「英文法全体を見通しよくする」という特徴が、そのまま本書の魅力だと感じました。
『英文法のエッセンス』の難易度|初心者より中級者向け
購入前に一番気になるのは、「自分の英語レベルでも読めるのか」ではないでしょうか。
私が実際に読んだ感覚では、英語初心者向けというより、中学・高校英文法を一度学習済みの人向けです。
| 英語レベル | 相性 | 理由 |
|---|---|---|
| 英語をほぼ初めて学ぶ | △ | 基本ルール自体を覚える本ではない |
| 中学英文法を一通り理解 | ○ | 知っているルールの整理に使える |
| 高校英文法まで学習済み | ◎ | 本書の解説を最も吸収しやすい |
| 社会人の英文法やり直し | ◎ | 昔覚えた知識を体系化しやすい |
たとえば「現在完了って何?」「不定詞って何?」というところから始める人には、一般的な中学・高校英文法の参考書を先に使ったほうが分かりやすいと思います。
一方で、
「現在完了の形は知っている。でも、過去形との違いを感覚的に説明しろと言われると困る」
「aとtheの基本ルールは知っている。でも英文を書くと迷う」
という人には面白い本です。

普通の英文法参考書との違い
『英文法のエッセンス』を一般的な文法参考書や問題集と比較すると、役割の違いが分かりやすいです。
| 教材 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 英文法のエッセンス | 英文法の本質を理解する | 読む・考える |
| 一般的な総合英文法書 | 文法事項を調べる | 網羅性が高い |
| 大学受験・TOEIC問題集 | 問題を解けるようにする | 演習量が多い |
| 瞬間英作文 | 知っている文法を口から出す | アウトプット中心 |
つまり、本書だけで英文法学習を全部完結させようとするのではなく、頭の中にある文法知識を整理するための本として使うと強みが生きます。
私はここが『英文法のエッセンス』というタイトルの意味なのだと思いました。
読んで特に印象に残った3つのポイント
本書では時制、完了形、進行形、助動詞、仮定法、不定詞、動名詞、分詞、冠詞、比較、前置詞、接続詞、関係詞など幅広い英文法が扱われています。
その中で、私が特に「読んでよかった」と感じたのが次の3つです。
1. 助動詞|will・can・mayをバラバラに覚えなくなる
以前の私は、will、may、can、mustなどの助動詞について、
「確率や可能性の程度によって使い分けるもの」
という理解が中心でした。
もちろん、それも助動詞を理解するひとつの方法です。
けれど『英文法のエッセンス』では、それだけではなく、助動詞を話者の判断や心の中の考えと結びつけて整理しています。
この考え方を読んでから、will、may、can、mustなどが、単なる日本語訳の違いではなく、ひとつのまとまりとして見えるようになりました。
特に印象的だったのが「未来」の捉え方です。
学校英語では、
未来=will
と覚えた記憶がある人も多いと思います。
けれど、本書を時制の章から順番に読んでいくと、現在・過去・完了・進行と時間を整理したうえで助動詞へ進むため、willの位置づけが以前より立体的に見えてきました。

この章だけでも、本書を読んだ満足感がありました。
2. 冠詞|a・theを「示す範囲」で捉える
日本人が英文を書いたり話したりするときに迷いやすいのが、aとtheですよね。
「初めて出てきた名詞にはa」
「2回目からthe」
という基本ルールは知っていても、それだけでは説明できない英文がたくさんあります。
本書では、たとえば次のような英文を使いながら冠詞を考えていきます。
The dog is clever.
A dog is clever.
Dogs are clever.
どれも文法的に考えられる英文ですが、話し手が名詞をどう捉えているかが違います。
『英文法のエッセンス』では、aとtheを単なる暗記ルールとしてではなく、名詞が示す範囲という観点から説明していきます。
私はこれを読んで、以前から少し引っかかっていた、
「特定のものにtheをつけると言うのに、なぜ総称表現でもtheが使えるのか」
という疑問がかなり整理されました。
冠詞は、日本語に直接対応する仕組みがないため、ルールを丸暗記するだけだとなかなか感覚が身につきません。
だからこそ、こうした概念から理解する説明が役立ちました。
3. 前置詞|何十個もの意味を「根本イメージ」からつなげる
前置詞についても、この本を読む価値がありました。
at、in、on、of、to、for、by、withなどは、どれも中学校で習う簡単な単語です。
ところが辞書を開くと、ひとつの前置詞にたくさんの意味や用法が並んでいます。
これをすべて別々に暗記するのは大変ですよね。
本書では、それぞれの前置詞が持っている中心的なイメージを確認し、そこから意味がどう広がっていくのかを考えます。
これが非常に分かりやすかったです。
私には、
1つの前置詞に散らばっていた複数の意味を、横串でグサッと刺してつないでもらった
ような感覚がありました。
根本のイメージが分かれば、新しい用法に出会ったときにも、単に新しい日本語訳をひとつ追加して覚えるのではなく、既にあるイメージにつなげて考えられます。
前置詞の「語感」を身につけたい人には特に面白い章だと思います。
『英文法のエッセンス』を読んで感じた5つのメリット
英文法の「点」が「線」になる
私がこの本を一番評価しているのはここです。
英文法を長く勉強していると、知識そのものは増えていきます。
しかし、
現在形は現在形。
助動詞は助動詞。
冠詞は冠詞。
前置詞は前置詞。
というように、頭の中で別々の引き出しに入ったままになりがちです。
『英文法のエッセンス』は、その引き出し同士をつなげてくれます。
文法問題の正解をひとつ増やすというより、英文法全体を見る解像度が上がるという表現のほうが近いです。
丸暗記に疲れた人でも読み物として進められる
問題集ではないので、延々と穴埋め問題を解く必要はありません。
章ごとにテーマを追いながら読むスタイルです。
「また英文法を最初から全部暗記し直すのか……」
と考えると気が重い社会人でも、比較的読み進めやすいと思います。
日本語だから細かな概念まで理解しやすい
この本を読む前まで、私は英語の細かな語感を理解するには英語で書かれた文法書のほうがいいのではないかと思っていました。
たとえば世界的に知られている『English Grammar in Use』のような本です。
もちろん英語で英文法を学ぶメリットはあります。
しかし、本書を読んで考えが少し変わりました。
外国語の細かな概念だからこそ、一度日本語で深く理解してしまったほうが早いこともある。
特に助動詞や冠詞のような抽象的なテーマでは、そのメリットを強く感じました。
大人の「英文法やり直し」と相性がいい
学生時代に一度学んだ内容を、大人になってもう一度勉強すると、昔とは違う疑問が出てきます。
「ルールは分かるけど、そもそもなぜ?」
という疑問です。
本書は、この「なぜ?」にかなり踏み込んでくれます。
英語を何年も使ってきた人が読み直しても、新しい発見があると思います。
スピーキング練習の土台にもなる
文法を深く理解しただけで、英語が突然ペラペラ話せるようになるわけではありません。
しかし、英文を自分で作るときの迷いは減らせます。
理解した文法を実際に口から出せるようにするには、瞬間英作文のようなアウトプット練習を組み合わせると効果的です。
私は瞬間英作文も実際に続けてきました。
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『英文法のエッセンス』のデメリット・注意点
かなり気に入った本ですが、誰にでもおすすめできるわけではありません。
英文法の完全初心者には少し難しい
本書は文法事項そのものをゼロから覚えさせる構成ではありません。
「助動詞」「完了形」「不定詞」「分詞」「関係詞」といった基本用語を見たときに、だいたい何のことか分かるレベルのほうが読みやすいです。
中学英文法にかなり不安がある場合は、基礎参考書を一冊終えてから読むほうが、本書の良さを感じやすいと思います。
問題演習はほとんどできない
これは重要な注意点です。
『英文法のエッセンス』は読む文法書です。
TOEIC Part5や大学受験のような4択問題を大量に解く教材ではありません。
そのため、試験対策が目的なら別途問題集が必要です。
TOEIC対策なら、頻出する文法パターンをこちらの記事にまとめています。
辞書のような網羅性を期待する本ではない
226ページというサイズに英文法の考え方を凝縮した本なので、総合英文法書のようにすべての例外や細かな語法を収録しているわけではありません。
分からない表現をその都度調べる「辞書」として使うより、最初からある程度まとまった単位で読むほうが向いています。
一度読んだだけですべて身につくわけではない
読んでいる最中は、
「なるほど!」
と思います。
しかし、それだけで冠詞や前置詞を完璧に使えるようになるわけではありません。
本書で概念を理解したあと、実際の英文を読んだり、自分で英文を書いたり話したりしながら何度も確認する必要があります。
この本は英語学習のゴールではなく、頭の中に英文法の地図を作る本と考えるのがいいと思います。
『英文法のエッセンス』がおすすめな人・おすすめしにくい人
| おすすめな人 | おすすめしにくい人 |
|---|---|
| 中高英文法を一度学習済み | 英文法を初めて勉強する |
| 社会人で英文法をやり直したい | 大量に問題演習をしたい |
| 暗記より「なぜ」を理解したい | 短期間の試験テクニックだけ知りたい |
| 冠詞・助動詞・前置詞を感覚まで理解したい | 辞書代わりの網羅的文法書が欲しい |
| 英文法知識を体系的に整理したい | 例文暗記だけを進めたい |

『英文法のエッセンス』とEnglish Grammar in Useの違い
英文法をしっかり学びたい人なら、Cambridgeの『English Grammar in Use』とどちらを使うか迷うかもしれません。
私は両者を競合教材というより、役割の違う本だと考えています。
| 英文法のエッセンス | English Grammar in Use | |
|---|---|---|
| 言語 | 日本語 | 英語 |
| 中心 | 文法の本質・体系 | 用法理解+練習 |
| 読み方 | 章を読み進める | Unitごとに学習 |
| 向いている目的 | 頭の中を整理する | 英語で文法と用法を身につける |
私の場合、以前は「英語の語感を身につけるなら英語で書かれたGrammar in Useのほうがいい」と考えていました。
しかし『英文法のエッセンス』を読んで、母語で概念を一度深く理解することにも大きな価値があると感じました。
どちらか一冊しか選べないなら目的次第です。
「英文法そのものを一度頭の中で整理したい」なら『英文法のエッセンス』。
「英語で説明を読みながら用法と練習を積み重ねたい」ならGrammar in Use。
この使い分けが分かりやすいと思います。
『英文法のエッセンス』はTOEIC対策にも使える?
TOEIC対策専用本ではありません。
そのため、試験直前にスコアを上げたいだけなら、TOEIC専用問題集を優先したほうが効率的です。
一方で、長い目で見ると本書で身につく文法理解はTOEICにも役立ちます。
Part5では、
- 品詞
- 時制
- 助動詞
- 前置詞
- 接続詞
- 関係詞
などの理解が必要だからです。
ただし、
英文法のエッセンス=理解する本
TOEIC問題集=素早く正解を選ぶ練習をする本
と役割を分けたほうがいいです。
理解と演習をセットにすることで、単なる丸暗記より文法知識が定着しやすくなります。
おすすめの使い方|1回読んで終わりにしない
私なら、次のように使います。
- 1周目:細かい部分にこだわらず最後まで読む
- 2周目:「なるほど」と感じたページに付箋やマーカーを入れる
- 英文を読む:学んだ概念が実際の英文でどう使われているか確認する
- 英文を書く・話す:冠詞、時制、前置詞などを自分で使ってみる
- 迷ったら戻る:該当する章だけ読み直す
特に重要なのは、読むだけで終わらせないことです。
たとえば冠詞の章を読んだら、その後英文を読むときにaとtheを少し意識してみる。
前置詞を読んだら、「なぜここはinではなくatなんだろう」と考えてみる。
こうすると、書籍の中だけにあった知識が実際の英語につながります。
英文法を理解したあと、自分で英文を作る練習まで進みたい場合は、瞬間英作文との組み合わせも相性がいいです。
『英文法のエッセンス』についてよくある質問
初心者でも読めますか?
読めないわけではありませんが、中学英文法をひととおり学んでから読むほうがおすすめです。
本書は文法ルールをゼロから覚えることより、既に知っている英文法の本質やつながりを理解することに重点があります。
高校生にもおすすめですか?
高校英文法を学びながら「なぜこのルールになるの?」と考えるのが好きな高校生には面白いと思います。
ただし、大学受験問題集の代わりにはなりません。
問題演習用教材と併用するのがいいです。
社会人の英文法やり直しにも使えますか?
むしろ相性がいいと思います。
学生時代に現在完了、不定詞、助動詞、関係詞などを一度勉強している人ほど、「昔覚えた知識がこうつながるのか」と感じやすい本です。
問題集は付いていますか?
問題演習を中心とした本ではありません。
英文法を理解するための「読む文法書」と考えたほうがいいです。
問題を解いて定着させたい場合は、別の問題集を併用する必要があります。
TOEICの点数アップに直結しますか?
TOEIC専用教材ではないので、短期的なスコアアップなら公式問題集やPart5問題集のほうが直接的です。
ただ、英文構造や品詞、時制、前置詞、接続詞などの理解が深まるため、中長期的にはTOEICの土台になります。
英文法を個別に復習したい場合は?
本書で全体像を理解したあと、個々の文法項目を例文で確認すると理解が定着しやすいです。
たとえば、単数・複数や名詞の捉え方を復習したい場合はこちらの記事も参考になります。
each・every・allの単数・複数と不可算名詞の使い分け
まとめ|英文法を「暗記」から「理解」に変えてくれた本
私にとって『英文法のエッセンス』は、英文法の知識を増やす本というより、既に持っていた知識を整理してくれた本でした。
特に印象に残ったのは、助動詞、冠詞、前置詞です。
それまでバラバラに覚えていたルールの背後に共通する考え方が見えて、英文法の「点」が「線」につながりました。

『英文法のエッセンス』を読む前まで、英語の語感やセンスを身につけるには、英英辞典を長期間使ったり、『English Grammar in Use』のような英語で書かれた文法書を読み続けたりする必要があると思っていました。
しかし、この本を読んで考えが変わりました。
外国語だからこそ、複雑な概念をまず日本語で深く理解する。
そのうえで実際の英文を読み、書き、話していく。
その学び方も十分にありだと思います。
「英文法のルールはだいたい知っている。でも一度きれいに頭の中を整理したい」
そんな人には、一度読んでみる価値がある英文法書です。
参考|『英文法のエッセンス』の主な目次
本書では、英文法を大きなテーマごとに整理して解説しています。
- 動詞の形が示す時間―時制・完了形・進行形
- 心の想いを描く表現―助動詞・仮定法
- 文中でさまざまな働きをする動詞の変化形―不定詞・動名詞・分詞
- 名前と修飾の表現―名詞・冠詞・形容詞・副詞・比較
- 文中の「語のまとまり」を示す語―前置詞・接続詞・関係詞
- ワンポイントコラム
単元を細切れに覚えるのではなく、こうした大きなまとまりで英文法を捉えていく構成です。

『英文法のエッセンス』目次①

『英文法のエッセンス』目次②

『英文法のエッセンス』ワンポイントコラム一覧