『Nativeの速い英語はなぜ聞き取れないのか』
原因を因数分解すると、もやっとしている状態をスッキリさせて対策をたてやすくなります。
「何回聞いても分からない」
「聞き取れないのが悔しい・イライラ」
そんな状態を少しずつ確実に改善していくための英語リスニング対策をまとめました。
\教材ごとの特徴がわかる/
英語が聞きとれない理由
英語が聞き取れない状態と原因を整理したスライドです。
ここでは、”英語が聞き取れる”と"意味が理解できる"を同じ意味で捉えています。
英語が聞き取れるかどうかは、大きく3段階を経て決まります。
音声を聞く ⇒ 知識と照合する ⇒ 意味を理解する
そして、英語が聞き取れない原因は大きく3つに分かれます。
- 相手の声が聞こえない
- 英語の知識が不足している
- 速い英語に慣れてない
相手の声が聞こえない
聞こえた英語を脳の知識と照合するためには、相手の英語が十分に聞こえることが大前提です。
声が小さかったりまわりの雑音が大きかったりすると、脳内知識との照合ができません。
一見、当たり前すぎることのように感じますよね。
でも、『聞こえない』を『自分の英語力が低いから聞き取れない・・・』と思い込んでしまいがちです。
英語の知識が不足している
語彙、英文法、正しい発音、話題の関連知識など、言語に関する知識やトピックに関する知識が不足していることが英語が聞き取れない一番大きな原因です。
1倍速のこの音を聞いてみてください。
ギリシャ語です。
1倍速
Πού είναι ένα κουτί σκόνης;
まったく意味が分かりませんよね。
ギリシャ語の単語の意味・発音・文法の知識がないからです。
話す速さ以前の問題なので、同じメッセージを0.5倍速にしてもして聞き取れません。
0.5倍速
Πού είναι ένα κουτί σκόνης;
つまり、リスニングのためには語彙力・発音・文法知識が土台として必要ということですね。
ちなみに、先ほどのギリシャ語の例文は「ごみ箱はどこですか?」の意味です。
ただ聞いただけでは全く想像つかなかったと思います。
しかし、フードコートで食事をとっていたときに、食べ終わったプレートを手にもった隣の席のギリシャ人から聞かれたとしたらどうでしょう?
きっと、
「どこに片づければいいのか知っていますか?」
のような意味ではないかと想像できますよね。
つまり、文脈や状況がリスニングを助けてくれます。
語彙
知識にない英単語は意味理解につながらず聞き取れません。
たとえば、自分は以下の英文を聞くと、"exonerated"の語彙知識が脳にないため聞き取れません。
Mike was fortunately exonerated of all charges.
exonerate:免除する
”Mike was fortunately”と”all charges”の部分は語彙知識があるので大丈夫です。
けれど、この英文では動詞の”exonerated”が文の大事な意味を伝えています。
重要箇所が分からないと、「英語が聞き取れなかった・・・」と感じてしまいます。
英文法
英文法の知識が不足していると、英文が聞き取れないことが多くなります。
再び自分の例で恐縮ですが、ifを省略した仮定法が苦手です。
Should you see Mike at the conference, please say hello to her.
この英文に含まれる英単語すべての語彙は知識にあるものの、以下の文法が十分に理解できていません。
仮定法のルール
- ifが省略されると主語と助動詞・wereの順番が入れ替わって倒置の形をとる
固有名詞
日本語なら、鈴木さん・佐藤さんなどよくある苗字とそうでない苗字の判別ができるぐらい”固有名詞の感覚”が備わっています。
でも、英語は違います。
たとえば初対面のイギリス人と挨拶を交わすシーンで以下のように相手から言われたとします。
Hi!Nice to meet you. I'm Galeron and I live in Peterborough.
イギリスに住んだこともなくイギリス人と接する機会も少なければ、これらの名前や地名にピンときません。
固有名詞が聞き取れないと、その英文全体が聞き取れなかったような感覚になります。
話題の関連知識・背景知識
トピックに関する知識も英語の聴き取りに重要です。
ただ、第二言語の場合、「内容が理解できなかった」を「英語の言語能力が不足していた」のせいにしてしまいがちです。
日本語なら、トピック知識がない話題を聞いて理解できなかったとしても「日本語力が足りなかった」とは思いませんよね。
しかし、実際は英語でも話題の知識が不足しているために聞き取れないことも多いです。
たとえば、以前初対面で流ちょうな英語を話す韓国人2人と英会話をしたことがあります。
その韓国人2人は韓国で有名なお菓子についてトークを開始。
内容がほとんどわからず英語が聞き取れなかったと会話直後は感じました。
けれど、よく考えてみると、英語以前に韓国のお菓子メーカーも銘柄も何も知らなかったことのほうが本質的な原因でした。
また、昔、現場工事のアルバイトをした際にこんなこともありました。
配管パイプを運ぶ際の注意点を外国人の職人が英語で説明したのですが、私は何を言っているのかさっぱりわかりません。
けれど、隣の工事経験がある日本人アルバイトは説明内容を1回で理解していました。
言語知識が不足していたために聞き取れなかったのか、
トピックに対する知識が欠落していたのか、
その両方か、
冷静に見極める必要があると思います。
英単語の正しい発音
発音を間違えていた英単語例
- above(上に)
- dawn(夜明け)
- infamous(悪名高い)
- mortgage(住宅ローン)
- indictment(起訴)
以前、indictmentを”インディクトメント”と思い込んでいました。
リストの他の英単語も正しい発音を理解していなかったです。
発音を誤って理解していたときは、当然頭の中で意味理解まで到達できませんでした。
正しい発音
above
dawn
infamous
mortgage
indictment
例文
That infamous company was accused of various bad behavior and ended in indictment.
また、私はRではじまる短めの英単語のNative発音は今なお苦手です。
right, ripeなど、後ろに聞き取りやすい破裂音(/p/, /t/, /k/)の子音が続く英単語はまだマシですが、以下のような英単語は音がこもった感じで聞こえたまま短く終わるので聞きとれないことが多いです。
Rで始まる聞き取りにくい英単語
ruin
real
rim
英単語の意味は知っていても、正しい発音を知らないと聞き取れないです。
ネイティブ英語の音の変化ルール
隣り合う英単語のつながりによって音が変化するリエゾンと呼ばれるもので、リンキング、リダクション、フラッピング、弱形などです。
体系的に音の変化ルールが分かっていれば、ネイティブ英語が牛がよだれを垂らして話しているようには聞こえません。
たとえば、アメリカ人Nativeが日常会話で話す"Get it"はゲリッ!ですよね。
Get it!
音の変化ルールを知っていれば、”ゲットイット”とはネイティブが言わないことがあらかじめ分かります。
その状態なら英語を聞き取りやすくなります。
また、冠詞のa, the, 前置詞のof, toなどは意味を伝える英単語というより機能を果たす英単語ですよね。
こういう言葉は、ネイティブの日常英会話では非常に弱く発音されます。(弱形)
日本語でも同じような現象はおきますよね。
日本人同士の日常会話では、「が」、「は」、「に」、「へ」などの助詞はかなり省略されます。
速い英語に慣れていない
既に述べたような、語彙、発音、トピックなどの知識があったとしても、速い英語に慣れていないと理解が追いつきません。
「英語が聞き取れない」を改善する対策
次に、英語が聞き取れる状態です。
英語が聞き取れる状態
- 相手の声が十分聞こえる
- 聞こえた英文に関する言語知識が足りている
- スピードに慣れている
こういう状態になると英語が聞き取れます。
別記事にまとめた英語リスニングの勉強法とあわせてチェックしていただけたらと思います。
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シャドーイングをする
シャドーイングは聞こえた英語を2~3語遅れて発声する練習です。
文法構造の理解やスピーキング練習に有益なリピーティング(1文を聴いた後に再現する)とは違います。
耳で聴くNative英語の以下のような音声的な要素に注意を払い発音練習します。
音声的な要素
- ストレス(アクセント)
- リズム
- 強弱
- 長さ
- 速さ
- イントネーション
- ポーズ
- 音の変化(リエゾン)
シャドーイングの効果
聞こえた音を声に出して認知し(音声知覚)、認知した音の意味を理解する練習ができる(意味理解)
WPM (Word Per Minute)を定量的な目安として、現状のレベル(語彙力・文法知識)にあった教材で実施することが重要です。
そして、ネイティブ英語には強弱とリズムがあります。
それらを意識してシャドーイングやディクテーションに取り組むとリスニング力がグングン伸びます。
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\シャドーイングの効果がわかる/
ディクテーションをする
ディクテーションは聞こえた英語をスクリプトを見ないで書き取る練習です。
難しい英文の場合、最初は一度で聴きとれるのはわずか1~2語です。
けれど、何度も再生して聴き取るチャレンジをすることで、徐々に聴きとれる部分が増えていきます。
これ以上繰り返し再生しても聞き取れない段階になったらスクリプトを確認し、再度再生します。
聞こえた音を脳内に留めることなく、見える文字にすることで英単語とそのNative発音を脳内で”リンク”させることができます。
ディクテーションの効果
聞き取れる英語と聞き取れない英語を見える化してハッキリさせられる
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【英語リスニング強化策】ディクテーション練習のやり方
いくらなんでも高校のときの英語の先生が話す英語とネイティブ英語は違いすぎるだろ。。。 20年以上前に大学に入った後、しばらく経ってアイルランド人の先生と英会話する機会があって、さっぱりネイティブ英語が ...
英語44音素の発音記号を再確認する
英語には、母音が20個、子音が24個、合計で44個の音素があります。
これらの発音記号と発音の仕方をしっかりとインプットしなおしましょう。
英語の発音記号と発音の仕方を確認できるサイト
最近はWebやアプリの辞書はネイティブの発音を音で聞いて確認できますよね。
私は主にLongman英英辞典のスマホアプリを使っています。
Native英語の音の変化ルール(リエゾン)を覚えて発声練習する
Native英語の音の変化のルールを体系的に理解しましょう。
- 英語の音素(最小限の音の単位)
- リンキング
- リダクション
- フラッピング
- 弱形
特に、前置詞は音の変化が起きやすいです。
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前置詞のリスニングが難しい理由を知っておけばレベルアップ確実!
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固有名詞は聞き返すと”割り切る”
どうやっても1回で聞き取れないものは、聞き返す表現をマスターして対処した方がよいからです。
聞き返す質問文
Could you spell your name please?
(名前のスペルを教えていただけますか?)
Would you tell me where it is located on this google map ?
(このgoogle mapでどのへんか教えてもらえますか?)
2番目の質問文は、スマホのGoogle mapを見せながら聞くと、地図と名前が表示されるので場所もスペルもうまく確認できますよね。
語彙力や文法知識を増やして”推測力”を養う
英語の語彙力や文法知識を増やします。
語彙力を増やすためには、2つのやり方を併用します。
語彙力の増やし方
- 市販の英単語帳(キクタンシリーズなど)やアプリを使って頻出英単語を集中的に覚える
- 実践の中で覚えたいと思った英単語や英熟語をリストアップする
②については、Googleスプレッドシートを使って『My英語表現リスト』としてまとめます。
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そして、文法知識が備わってくると、相手が使う英文の組み立てを予想しやすくなります。
わかりやすい例をあげると、相手がnot onlyで英文を始めたら「"but (also)"と続くはず」と瞬時に先回り予想ができますよね。
また、前置詞の後の動詞は動名詞になるので「ingがついたはずだ」と速い英語を聞いた直後でも瞬時に振り返って推測できます。
文法知識が聞き取りを助けてくれますよね。
話題の関連知識をトーク前に増やす
英会話で話すテーマがあらかじめ分かっている場合、内容や背景に関す知識をできるだけ事前にインプットしておきます。
授業やレッスン教材なら予習時間を確保し内容把握。
仕事のディスカッションなら議題に関する経緯、周辺知識、疑問をできるだけ明確にしておく準備。
例
- レストランでの注文シーンなら、その国の食文化や調理法に関する情報を事前にインプットしておく
- 道順を教えてもらうシーンなら、地図を見てランドマークを事前にインプットしておく。(または地図を見せながら聞く)
リスニングにおいて内容に関する知識が重要なことは、視力でたとえると分かりやすいかもしれません。
夜寝るときにメガネもコンタクトも外すとほとんど見えませんよね。
けれど、家のレイアウトが頭で分かっているので(知識がある)、電気のスイッチを押せたりメガネを取りに行ったりできます。
これと同じです。
知識が理解を助けてくれるので、トピック関連知識をリスニングの前にできるだけインプットしておきましょう。
前に絶対戻らない多読・速読をする
リスニング力の強化に多読や速読も有効です。
知覚の方法が耳から目に変わっただけで、脳内知識と照合し意味を理解するプロセスはリスニングとなんら変わりません。
実際の英会話やリスニングテストでは、数秒戻ってもう1回再生はできないですよね。
これと同じ状態をキープすることを徹底すれば、リーディングでもリスニングの学習ができます。
自分が良く使うのは、以下の英語ニュースアプリやサイト記事です。
NHK World Newsが一番易しめの語彙で中級者向け。
その次にJapanToday。
Japan Timesは、難しい表現も混ざり上級者向けです。
- 興味がある記事を選ぶ。(学習を継続するため)
- 一気に最初から最後まで読み進める。(意味が分からない箇所があっても絶対に前に戻らない)
- 分からなかった英単語をチェックする。(必ず記事を読み終わってから)
この1~3を確実に行うには、少し易しめのコンテンツを使いましょう。
自分はNHK World Newsぐらいがちょうどいいです。
難しめのコンテンツで多読をしようとしても、続かなかったら学習効果がありませんよね。
分からない意味の英単語が2-3語以下の記事なら、文脈も使って意味を推測しやすいので多読を継続しやすくなります。
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【1日3分の英語多読】このリーディングでリスニング力UPの効果もありました
英語の学習法『多読』って聞いたことありますか? 実はこの多読、やり方に注意して続けると、リーディング力だけでなくリスニング力も伸ばせる素晴らしい学習法です。 でも、 「意味の分からない英 ...
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あとがき:シャドテンは試す価値あり
英語が聞き取れない理由と実践して効果があった対策をまとめました。
一時は「聞き流し」もやりましたが、自分にはほとんど効果がなかったです。
仕事で英語学習の時間があまり取れないなかでも、学習ツール『シャドテン』は特によかったです。
1日30分でリスニング力をグングン効率的に上達させられました。
シャドーイングを通じてNative英語の音の変化のルールを学ぶとリスニング力と発音の両方が短期間で向上します。
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【シャドテン】速いNative英語の聴き取りに最適のシャドーイング練習
”仕事で使える英語力”を目標にシャドーイング練習の習慣化に取り組んでいます。 いくつかの教材を使ってきましたが、評判のシャドテン(https://www.shadoten.com/)も利 ...
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