価格交渉に臨むときは、自分と相手がお互いに”満足できる”条件で契約にたどりつけることを目指しますよね。
とはいっても、利害関係があるため、双方が100%満足することは難しいかもしれません。
しかし、双方で”受け入れられる”条件を見出し合意することができれば交渉は成功ですね。
これまで16年にわたり外国企業との英語による交渉業務やプロジェクト管理業務に携わってきました。
振り返って、英語での価格交渉に必要となるスキルや大切なことを記事にしました。
買い手と売り手の両方の立場で役立つようにまとめています。
この記事を読むと分かること(After)
- 価格交渉の進め方・よく使われる交渉戦術(Bad cop/Good cop)
- 価格決定に関わる要素と関連する英語表現
- ノンバーバルコミュニケーションで気を付けること
自分が求める契約条件を段階的に整理する
交渉に臨むにあたって、自分が求める契約条件を段階的に詳細化していくことが重要です。
主な契約条件
- 価格:商品、配送料、保守料等購入物品/サービスのライフサイクルコスト全体をカバー)
- 購入量/販売量:コミット量(購入必須)、フォーキャスト量(予想)などボリュームディスカウントに影響
- 契約期間:締結した価格で対象商品/サービスを購入できる期間
- 納期:発注後納品までの日数
- 支払い期限:発注後30日、45日、60日、90日など
- 支払い通貨・為替:円/ドル/ユーロなど
- 保守条件:瑕疵期間と有償保守サービスそれぞれの内容
交渉の初期のころは予算感以外は特に決まっていないケースもよくあります。
相手からの提案や反応を確認しながら現実的な契約の条件を確認していく進め方をとります。
- 契約締結前までに確認しておくべき条件の項目に漏れがないこと
- 自分たちの望む契約条件を整理する(優先度をつける)
交渉の詰めの段階になって初めて重要な条件を相手から聞くようなことがあるとトラブルのもとですね。
相手が希望する契約条件と比較する
契約をうまく進めるには、相手が望む契約の条件を分かっていることが重要です。
例
条件(プライオリティ) | 自分(買い手) | 相手(売り手) | 状況 |
価格(必須) | $100/台以下 | $120/台 | ×(価格交渉要継続) |
購入量/販売量(調整可) | 年間1000台(フォーキャスト・コミット無) | 年間1000台(フォーキャスト・コミット無) | 〇 |
契約期間(調整可) | 1年 | 2年 | ×(要調整) |
納期(調整可) | 発注後14営業日以内 | 発注後14営業日以内 | 〇 |
支払期限(必須) | 60日 | 30日 | ×(他の条件交渉次第で妥協可) |
支払通貨(必須) | ドル | ドル | 〇 |
保守条件(調整可) | 初年度保守料無料 | 初年度保守料無料 | 〇 |
・・・ |
交渉戦術を使う(例:badcop goodcop戦術)
外国企業との交渉において、特に欧米人との交渉の場合交渉戦術が使われます。
過去に買い手の立場で外国人社員を含めたチームを組んで交渉に臨んだことがあります。
私はそれまでその交渉戦術を知らなかったのですが、外国人社員から教えてもらいました。
結果的にうまく機能したと振り返っています。
交渉戦術のひとつとして有名なものであり、知っておいて損はないです。
badcop goodcop戦術
買い手側の当事者が2人以上のチームを組み、各々が演じる役割をあらかじめ決めておく
1名(悪役):相手に対して厳しい条件をどんどん突きつける。多少の無理難題も平気で要求する
1名(親切役):いい人役。交渉の進展を伺う立場をとり、売り手側の理解者の役割も担う
この戦術が使われると、悪役からの強い要求に売り手側は困ります。
悪役はハイボール戦術と呼ばれる必要以上の高い要求をまず最初にしてきます。
そして交渉が進み、売り手が困り果てたところに親切役からより簡単に交渉がまとまる条件の提示が行われます。
売り手側からみると、相手が妥協してくれたように感じるのです。
しかし、買い手側は最初からその条件で満足できるものだったのです。
こうして買い手は自分たちの望む条件を獲得。
それにより、悪役からの要求条件をまともに受ける必要があるのかを冷静に見極めながら交渉を進めることができます。
そして『badcop goodcop戦術』を相手が使っていることが分かったら一歩引きましょう。
相手側からの無理難題の要求に振り回されないような毅然とした態度で交渉を続けることが大切です。
価格決定に影響する要素を理解する
契約交渉において価格決定に影響する要素がいくつかあります。
特に注意したいのは、以下の3点です。
価格決定の要素
- 買い手と売り手の優位性のバランス
- 決算期
- 製品のライフサイクル
① 買い手と売り手の優位性のバランス
買い手が優位になるバターンとしては、業界トップシェアをもつような企業の場合です。
売り手から見ると、ある業界の主要プレイヤー企業に販売実績をつくることは大きなPRになります。
また継続取引の可能性も高まり安定した受注を狙うことができることもあります。
反対に、売り手が優位になるパターンは、その製品/サービスでシェアトップなどの優位性をもつ場合です。
交渉の中で値崩れをさせないスタンスを貫き、強気な交渉を行うこともできます。
② 決算期
成果に応じた報酬の割合が大きいからです。
このため、決算期の締めが近いタイミングになると見積価格が大きく下がることがよくあります。
決算前に、赤字にならないぎりぎりの範囲で価格を下げる外資系企業の売り手をこれまで何度も目にしました。
買い手の立場としては、相手の決算期に合わせて交渉をまとめるスケジュールを組むのが得策です。
③ 製品のライフサイクル
一般的にHardwareのモデル末期は値引きが大きいです。
古いモデルは原価計算上既に十分黒字化できていることや新モデルとの価格バランスなどによる理由と思います。
例えばPCなどをイメージすると分かりやすいですね。
私は1か月前にLENOVOのノートPCを買いました。
購入したスペックは、CPU: i7、メモリ:16G、SSD:1TBです。
価格は11万2千円でした。
購入したノートPCは販売開始後既に2年近く経過した1世代前のモデルです。
既にその後継機種が新モデルとして販売されていました。
その新モデルは、CPU: i7、メモリ:16G、SSD:512Gとスペックが劣るにも関わらず12万5千円でした。
その他の価格決定条件と関連英語表現
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交渉の場における態度やノンバーバルコミュニケーションに注意する
交渉には服装や態度・ふるまいなど、相手に与える印象も大切です。
欧米人を相手にした仕事をしていると特にそのことを感じます。
メラビアンの法則によると相手に与える影響は、93%はノンバーバルコミュニケーションからと言われています。
以下のようなポイントはしっかりと注意して自分に不利となる影響を相手に与えないように心がけましょう。
ノンバーバルコミュニケーション
- アイコンタクト・スマイル
- 引き締まった表情(疲れた表情をしない)
- 声をしっかりと発する
- 姿勢をピンと正す
- フォーマルなスーツ
- 足を組まない
ノンバーバルコミュニケーションで気をつけたいポイントはこちらの記事でまとめています。
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コミュニケーションにおいて、話す内容そのものが相手に与える影響はたったの7%。 残りの93%は目から入る情報など、言葉以外の情報からだそうです。 「人は見た目 ...
まとめ(交渉の場数を踏んでスキルアップする)
実際の交渉は、雑談や笑顔を交え和やかな雰囲気で行われることも多いです。(この記事のトップのスライドのように)
しかしながら、英語による価格交渉には多くのグローバルビジネススキルを必要とします。
- 英語スピーキング力
- 交渉戦術
- 英文メールの書き方
- 契約条件の理解
- 態度やふるまい
すべてをハイレベルにこなせるよになるには、経験と時間も必要ですね。
実践の場数を踏んで少しずつスキルアップさせましょう。
私自身もこのような偉そうな事を書いていますが、まだまだ出来ていないことのほうが多いです。
日々勉強しながら交渉業務に臨んでいます。
Good Luck!
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